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趙雲に抱きつき、大声で泣きわめく二人を尻目にゆっくりと辺りを見渡す
少なからず積まれた死体の山、山、山。賊に殺されたのが1割、さらに死体の1割は趙雲だが残り全てをやったのは俺だ
じっと手を見つめ、煙を噴かしながら先程息を吸うように殺した感覚を思い出そうと見つめるが殺しに慣れた身体からは何も思い出せない
─闇の中に光なんかない
─でも僕はそこに深いなにかを感じるんだ
─理性との戦いを通して
─僕は時の経過を気にしなくなった
どこかで聴いた曲の一節が頭をよぎった。
感傷的になりすぎだと即座に頭を振って思考を振り払う
(ちっ、柄でもない)
じろりと横で拘束されている男に視線を移す
「最前に寄った街でこんな噂を聞いた」
コートに落ちた灰を払いながらぽつりと漏らす
「漢室に仕えていた手練の男が一人、最近賊徒に混じって山賊ごっこをしているそうだ」
「………」
「たしか、名は徐──」
「飛竜だ」
「それがお前の名か」
「ああ」
「そうか」
空になった箱を握りつぶし、すっかり短くなった煙草を投げ捨てた
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