8人が本棚に入れています
本棚に追加
「高校生になっても変わらない……かぁ……。夏原君らしいね、なんか」
彼女はそういうと自動販売機で買ったオレンジジュースを一口飲んだ。
「中学のときも似たような感じじゃなかった? はじめて同じクラスになったときにさぁ、君、いじめられてたじゃん?」
「あれは……」
今と同じ5月だっけ?
僕の席はある日を境に、消え去ってしまっていた。
不良グループに盗られてしまったのだ。
おれはすぐさま返せと言った。
結果、ぼこぼこにされた。
容赦なんてなかった。おれはただひたすら耐えるしかできなかったのだ。
「そんで、わたしが助けてあげた」
一通り、たこ殴りにした彼らは満足したのか、再び談笑を始めた。
沈黙と哀れみの視線の中、声変わりのしてない不良たちの笑い声。
彼女は立ち上がって、廊下に出て行った。
先生にチクる気か? あいつ?
そんな声がした。
俺もそんな気がした。
だけど、彼女が額に汗を浮かべ連れてきたのは、机と椅子だった。
「使ってよ。これ、たぶん使わない奴だろうし」
彼女の優しさに痛く感動したおれは村井さんが友達になってくれればいいのにと思った。
最初のコメントを投稿しよう!