天使の甘言

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マクドナルドは道を挟んで向かい側にある。 おれたちは二人並んで外へ出た。 「ここもずいぶん変わったよね。前はさ、人ごみなんてなかったのに」 「過疎気味だったしね。大型ショッピングモールもできて、田舎と都会の狭間、駅もリニューアル、都会にも近いとあれば必然だったかもね」 そうだ、町は変わり続けている。 常に同じなんてことはないのだ。 「けど、夏原君は変わってなくてよかった」 ぐさりと来た。 そうだ、おれはそんな中、変わってない。 取り残されている。 「はは……。ところで用って何?」 吐き気がする。 駄目だ。今日はもう疲れた。 「え、その……」 なんで恥らうの? うつむいて、耳を赤くして……。 潤んだ目で彼女は口を動かす。 「……なの」 「え?」 「大間知君のことが好きなの!!」 大間知。大間知 涼。 好青年、クール、高身長、スポーツ万能。 おまけに優しい。通称「出来杉くん」 親衛隊あり。隊員10名。 優しさはというとそれはもう、いじめられていると守ってくれるほど。泣いてる時、泣き止むまでそばにいてくれるほど。いつも笑顔を絶やさないほど。 身を挺して、不良をいさめてくれる。 困り事も穏便に解決してくれる。 超人だ。 ちなみに、おれと幼馴染であるが口は利かない。あのまばゆいオーラがおれを駄目にするのだ。 彼女は彼を選んだ。幸せな家庭を築きそうだ。 そういえば、卒業文集にあったなあ。 理想のカップルだっけ? この二人がナンバーワンだったっけ? 歯軋り。気づかずにしていた。 いつだって、そうだ。母ちゃんも自分の子のように彼の話をし、彼に話しかけ、彼に手を振ったりする。惚れているのだ。 女の子でたぶん、彼を嫌いになる人はいないだろう。 かばってくれたとき、おれも正直好きになったし、男でさえ惚れるのだ。
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