天使の甘言

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川原沿いの土手にはランニングロードがあって、おれたちはそこを歩き続けた。 月が水面に浮かび、水の流れ行く音と風の音が辺りを支配している。深夜徘徊にはこんな穏やかな空間があるのを知った。 深夜徘徊が癖になりそうだ。 ビニール袋をぶら下げ、少しあくびしてから彼女に聞く。 「満足?」 僕はもう十分満足だ。気が済んだ。昨日あったことなんて遠い昔のように感じるって訳はないけど。 モヤモヤが、わだかまりが少し晴れた。 『えー、もっと楽しいことしようよー』 不満そうな声が響く。楽しいってーの、これでも十分スリルあったし。 「エロ本探すか」 近くの竹林に目を向けると、あきれたと言わんばかりのため息が聞こえた。 『もっと有意義にさあ、時間を使おう?』 彼女は何を求めてるのだ? 「文句多いなあ」 あの東屋が見えてきた。 数時間前の記憶が甦る。たぶん、いや、もう彼らはいないはずだ。 だけど、近づいて知る。 誰かいることを。 東屋の近くには、外灯があるけど切れかかっていてちかちかと点滅している。 中にいるのは、4人?  背の高いやつらに囲まれたチビなヤツがいる。この状況、まさしく……。でもこんな時間に・ 『カツアゲかな?』 どう見てもそうだ。 「おいおい、ふざけんなよー。用意したって言うから、こんな時間に、こんな人目に触れないとこにいるんじゃねえか」 「ごめん、取り上げられちゃって……」 「親御さんにか? はあ……? まじありえねえ」 「三千円ぽっちじゃ、何もできねえだろーが!!」 チビが殴り飛ばされ、地面に頭を打ち付けた。 「いいか? 一週間後。それまでに五万は持って来いよな? じゃあ解散。飯食いに行こうぜー!!」 ガラの悪い不良たちがこっちに向かってきたので、慌てて木陰に身を隠す。 『みっともないよー』 「だからって、何が出来る? おれはチキン野郎だし、第一関わりのない奴等だ!」 彼らが去って数秒後、嗚咽交じりの泣き声が聞こえてきた。 おれもあんな風に見えてるのかもしれない。 うずくまって、涙目になって、でも何も出来ないから唇を噛み締める。 「声かける」 『遅い! 乱闘騒ぎ起こさないと!!』 こいつはおれに喧嘩して欲しかったのか?
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