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少年はうつむいたまま項垂れた。
「僕、いじめられっこなんです。
学校でもあいつらに絡まれているんです。いつも金ばかり請求してきて、財布盗って中身抜き取ってからゴミ箱に捨てるんです。黒板には悪口が書かれて、かばってくれる子もいました。その子もいじめられました。病原菌だって……クラスメイトは近づいてもくれません。もう、辛いです」
彼は大粒の涙を流し続けた。脱水症状になっても知らんよ……。
おれはビニール袋からコーラを取り出し、一口飲んだ。
『あ、ミルクティーあるじゃん。あげたら? 恭平君』
え、嫌だよ。ただでさえ、おれは金欠なんだ。
お小遣いは月に五千円。
それでやりくりしてたけど、先月は前借して新作のゲームソフトと漫画を買ったんだぜ?
知らん奴にむざむざ、やることはできんよ。
「僕、背も低いし女みたいだって言われるし、変な女子には追われるし……もう引きこもってしまいたいです。もう飽き飽きしました。同じ毎日の繰り返しなんて」
「引きこもったらなんか変わるのか? 変わらないだろ?」
「引きこもったら……本が好きなんで作家目指します。そしたら親は納得、するわけないですよね……。憂鬱だ、死んでしまいたい」
その顔で言うな。おれは真剣に思った。こいつなんて、おれより苦しい思いはしてないはずだ。
今のおれには冷やかしにしか聞こえない。確かに一週間以内に五万はキツイし、考えるだけで死にたくなる。だけど、払う必要なんてないんだ。金なんて払う必要ない。
いや、おれは払ってしまった、か。昨日、の放課後。不良に払った。みっともない。
みっともない。
おれにとやかく言う資格はない。同類なのだ。彼と。
「おれもいじめられてるんだ。だから、気持ちはわかる」
「……そうなんですか? お互い辛いですね」
悲壮感に満ちた顔で彼は顔を伏せた。
昔のおれもこんなで、今もこんないじめられっこ。なんら変わらない。
『何怒ってんの?』
「怒ってない!」
「ご、ごめんなさい!」
慌てふためく少年。
お前に言ってない。
「これ飲め。ミルクティー、もう温いだろうけど」
「え、これ、くれるんですか? いいんですか?」
おれは彼を向かいのベンチに座らせるとコーラをまた飲んだ。
落ち着かない。焦る。何を言おうか?
慰めに来たんだっけ?
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