天使の甘言

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「金を出せ」 おれの高校生活、すでにじ・えんどって感じ。 柄の悪い金髪、ピアス穴茶髪、剃り込みの入れたボウズに囲まれ悟ったよ。 背後には女子便所、まさに背水の陣。 「お前みたいなやつは通学料が必要なんだぜ? 俺らに関わるんなら、友達料もな?」 凄むボウズはヤクザみたいな貫禄があって、足がこわばる。 関わりたくて関わってるんじゃない。 「てかさ。ダチ作らねーでなんで学校くんの? なにが面白いの?」 「五月でまだ誰一人と友達いない夏原くん。勉強もろくに出来ないらしいし、まずさあ、挙動不審すぎ。つーか、なんで生きてんの?」 なぜ、生きてるだと? 心臓が動くからだ。 勝手に、気ままに。そのくせ、休みやがりもしない。 「これなぁんだ?」 金髪の不良が持つものはおれの筆箱。おまけに中身空。 「まあ、必要だろ? 買えよ」 この蔑むような、いや、蔑んでいる視線。どうせ、中身のペンや鉛筆は違うところに隠してあるんだ。そして、返して欲しくば……ってかんじにリピート。 もううんざり。 筆箱へと伸ばした手が叩かれる。 「買え」 「……買います」 おれのバカそして、母ちゃんごめん。こんな親不孝の冴えないおれが息子なのにホント同情する。
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