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もう、後戻りは出来そうになかった。
『後悔してるでしょ? 面白いから、まあいいじゃん? 付き合ってあげなよ?』
完全に他人事じゃねえか! カオルに怒りを抱きながらおれはがくりと項垂れた。
『登下校は彼と共にしてみれば?』
なんでだよ。
『高校生に手を出すなんて、そんなことできる? 年上連れて歩いてるのに、絡んで来る不良はいるのかな?』
「よく考えろ、おれだぜ? こんな不細工と一緒にいても無駄だ、確実に絡まれる」
「?」
少年は首をかしげる。やばい、おれ、やばいやつかも……。
「明日から登校を手伝ってやろうか? おれ、不細工だけど」
「そんなことありません!! 僕、感激しました! 友達なんてほぼ一年いなかったんですよ? それなのに、あいつらに絡まれるかもしれないのに……僕と友達だなんて……嬉しいです!」
空の紙パックをゴミ箱に入れると、彼は携帯電話を取り出しておれのほうに向けた。
こいつは、赤外線送受信!?
なんてこった、おれには無縁の事柄だと……そうか、友達か……。
『悪くない、よね? そうでしょ?』
「うん」
おれは震える手で携帯電話を取り出し、叫んだ。
「どうすりゃいいんだ!?」
結局、彼に操作してもらい空白のアドレス帳を潤おすことができた。
おれは少し安堵した。母ちゃんに報告できる。
母ちゃんは心配してるのだ。友達がいないと思ってるに決まってる。うすうすどころか、びんびんに感じてるはずだ。
おれには友達がいない。
「では、僕はこれで! 夏原先輩! また会いましょう!!」
メガネをくいっとあげながら、彼は川に架かった橋を渡り闇の中に消えていった。
「深夜徘徊、いいものだ。てか、満足しました? カオルさんは?」
『お腹いっぱいだよ。さあ、もう4時だね。戻ろう』
眠気はなかったけど、まだここに居たかったけど、おれは頷いて家にこっそり戻った。
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