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「ねえ、食べてるときは携帯いじるの止めてくれる?」
母ちゃんが眉間に皺を寄せて、卵焼きを齧りつつおれに注意した。
そうはいかない、おれは「水野 奏」。彼と共に登校することに決めたのだ。途中までだけど。
「母ちゃんね。今日、実家に帰るから。じいちゃんの調子が良くないんだって。もともと、高血圧だから最近心配で心配で……。夜には父ちゃん帰ってくるから、一緒に食べなさい」
母ちゃんは、すでにカレーを作っていた。野菜のたくさん入った辛口のカレー。
おれの好物だ。夕飯に温めて食べてくれということなのだろう。
「じいちゃん、元気かなあ?」
「相変わらず、畑仕事してるらしいし。まあ、大丈夫かもしれないけど」
まあ、年寄りの冷や水って言葉もあるくらいだし、無茶は止めて欲しいのかもしれない。実際、もう、70代。
腰も痛めたって、昨年の田植え手伝ったとき言ってたし。
「携帯。ひかってる」
「メールだ!」
おれは返信メールを早速読んだ。
『○×神社で待ちます! 先輩、7時半までに来てください!』
「あら、友達?」
母ちゃんがディスプレイを覗き込んできた。
「ま、そんなとこだね」
おれは沢庵を口の中に放り込むと味噌汁でご飯を流し込み、麦茶を飲み干して「ご馳走さま」をして、自室に戻った。
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