真面目な悪友

3/10
前へ
/78ページ
次へ
「ねえ、食べてるときは携帯いじるの止めてくれる?」 母ちゃんが眉間に皺を寄せて、卵焼きを齧りつつおれに注意した。 そうはいかない、おれは「水野 奏」。彼と共に登校することに決めたのだ。途中までだけど。 「母ちゃんね。今日、実家に帰るから。じいちゃんの調子が良くないんだって。もともと、高血圧だから最近心配で心配で……。夜には父ちゃん帰ってくるから、一緒に食べなさい」 母ちゃんは、すでにカレーを作っていた。野菜のたくさん入った辛口のカレー。 おれの好物だ。夕飯に温めて食べてくれということなのだろう。 「じいちゃん、元気かなあ?」 「相変わらず、畑仕事してるらしいし。まあ、大丈夫かもしれないけど」 まあ、年寄りの冷や水って言葉もあるくらいだし、無茶は止めて欲しいのかもしれない。実際、もう、70代。 腰も痛めたって、昨年の田植え手伝ったとき言ってたし。 「携帯。ひかってる」 「メールだ!」 おれは返信メールを早速読んだ。 『○×神社で待ちます! 先輩、7時半までに来てください!』 「あら、友達?」 母ちゃんがディスプレイを覗き込んできた。 「ま、そんなとこだね」 おれは沢庵を口の中に放り込むと味噌汁でご飯を流し込み、麦茶を飲み干して「ご馳走さま」をして、自室に戻った。
/78ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加