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「さて、奏くんが待ってるから行こう」
おれは学生鞄を肩に掛け、意気揚々と玄関の戸を開けた。
眩しい直射日光に眩暈がしたが立ち止まってはいられない。
○×神社へと足を運ぶ。
いつもなら、もう二十分は寝ているところだ。しかし、目覚めは良好というか、あまり寝れなかった。
その神社は公園に隣接しており、水野奏は公園の遊具ブランコを立ち漕ぎして待っていた。
「先輩! 来てくれたんですね!!」
やたら、高い声ではしゃぐのでおれは少しいらっとした。
「来てくれないかもなんて、考えてました……」
彼は心底嬉しそうだった。おれへの信用のなさは、なるほど、いじめられ人を信じられなくなったことから来てるのかもしれない。
「じゃあ、行こう。一緒に登校すれば、少しは楽になるぜ?」
なんたって、高校生なんだからな。たぶん、大丈夫。
「えっと、南門までですよね……」
えへへと笑いながら、おれに曖昧な顔を見せた。
言えよ、駐輪場まで来て欲しいなら。
『言えないの。彼はたぶん。ためらってる』
わかってる。おれも友達いなかったし、わかる。
「ちょっと、迷惑かもしれませんが、正面玄関まで来てもらえませんかね?」
おっと、これは図太い精神の持ち主だ。
なんだ? おれはもうあの校舎を見たくもないんだぜ?
そこまで行くとたぶん、足がすくんでしまうぜ?
そんな姿見せられないぜ、おい。
「南門を少し抜けた、辺りまでだ……」
正直、怖くなってきた。というより、彼はおれの正体を知らないからそんなこと言えるのだ。
おれは君と同じいじめられっこだがキャリアが長い上、それはずっと現在進行形なのだ。
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