天使の甘言

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 あのさ、こんなおれでも入学前は甘酸っぱい青春の日々が送れると思ってた。  いや、何日も何十回も思い描いてた。  いじめ通された生ゴミ臭い青春を、鮮やかな虹色の高校生活を過ごせると、変貌させることができると思ってた。  勉強もしたんだ。そう、さなぎのように、膜が開くその瞬間を夢見て、我慢したんだ。ゲームだって漫画だってアニメだって断った。そのときの母ちゃんの喜んだ顔ときたら傑作。  しかし、無慈悲な現実。  立ちはだかる壁。けして、乗り越えられない。SASUKEの反り立つ壁の如く、険しい壁。  乗り越えられないのは親譲りの少しの短足のせいか?  いや、違う。そんなのあまり関係ない。  コミュニケーション障害。挙動不審。意を決して髪型整えても、垣間見える、オタク臭、ネクラ臭。友達皆無の事実なんて即刻バレた。 休み時間なんて、もう地獄。おれのこころ阿鼻叫喚。 母ちゃんの弁当が味気なくて困る。 みんな、グループで食ってんだもん。 完全に蚊帳の外。アウェー感。クラスのスローガン『心一つに一致団結』。 なにそれ、おれに対して一致団結なの? ねえ、教えてよ。
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