【6】君を縛り付ける為の約束を

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「でもその感じを見ると、仲睦まじいという訳ではないんだね?」 「そうですね、見事に嫌われてます」 「あははっ! それはご愁傷様! それじゃあ今のは聞かなかったことにしておくよ」 教授は俺達の身上関係が宜しくない事を悟ったのか、それ以上詮索される事はなかった。 人間は誰しも、触れて欲しくない部分を抱えて生きている。 十夜にとっての「家庭」は、まさにそれであるだろう。 自分の母親は、愛人に捨てられた哀れな女。 そう思っていても、全くおかしく無いのだ。 教授はその辺り、気の利いた性格だと分かっているから、俺は抵抗なく話したけれど 実際、俺に義理の弟がいるという事実を他人に明かしたのは、これが二度目だ。 ――ちなみに、義理の弟の存在を知っているもう一人の人物は、俺の唯一無二とも言える気心知れた友人だ。 アイツとは大学時代から今も続く仲で、お互い社会人になった今でも、年に何回かは会っている。 俺の家庭事情の全てを知っている、唯一の人物かもしれない。 アイツに関しては、また後日話す事になるだろう。
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