【6】君を縛り付ける為の約束を

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そこは彼女に程近い位置。 前に向き直ると同時に、徐ろに顔を上げる。 その一瞬の動作の中で、彼女にチラリと視線を送り、笑みを落とした。 誰にも気付かれないように、小さく。 すると彼女は途端に頬を染め上げて、手で顔を覆った。 ……いや、仕掛けたのは紛れもない、俺なのだけれど。 そんな可愛い反応をされたら、またしてもにやけてしまうから、やめて欲しい。 しかしこんな大勢の前でだらしない顔など絶対に出来ないので 俺は唇をきゅっと結んで、頬が緩みそうになるのを必死に、耐える。 ……滑稽だな。 彼女に少し意地悪をしようとして、まんまと倍にして返されてしまった。 俺は彼女に意識を侵されているという事を、もっと自覚しなければならないらしい。
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