【6】君を縛り付ける為の約束を

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そんな事情も知らない教授は、相変わらずにこやかな笑顔だ。 俺は「やってくれましたね」という想いを溜め息に乗せて、教授からマイクを奪った。 「えー、要は私を誰にも取られたくない、ということです。 私がいなくなったら、雑務をこなしてくれる人がいなくなって困りますからね」 そう取り繕った所で、恐らく彼女の耳には届いていない。 現に彼女は、一向に顔を上げてくれない。 その表情には、焦りと、不安と、苦痛にも近い感情が浮かんでいる。 俺はまた、彼女にこの顔をさせてしまった。 いや、今日に限っては、不可抗力と……させて欲しい。 教授。 この借りはいつか必ず、返してもらいますよ。
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