【6】君を縛り付ける為の約束を

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――とか何とか言っておきながら、普段よりも明らかに早く風呂から上がった俺は、何くわぬ顔でリビングへと戻る。 早く彼女を安心させたい、その一心が、結局俺のテンプレートを奪うのだ。 彼女はやはり何処か余所余所しく笑うものの、いつものように食事の準備を整えると、二人向い合って食事を始めた。 他愛の無い会話をして彼女の様子を窺うが、やはり彼女の表情には翳りが残る。 「……優愛」 その表情に耐えられなくなった俺は、結局ストレートに彼女に声を掛けてしまうのだった。 「もしかして、教授の言ったこと気にしてる?」 「え? ……と」 彼女は言葉を濁す。 更には俯き、肩を強張らせている。 ……彼女は否定も肯定もしない。 けれどその反応こそが、肯定をこれでもか体現しているという事に、彼女は気付いていないのだろうか。 本当に、どこからどこまで純真で、困る。 そんな素直に憂いな顔をされたら、必死に押さえ付けている俺の宜しくない部分が ……出てきてしまうだろ。
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