【6】君を縛り付ける為の約束を

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「……本当ですか?」 「嘘ついてどうする」 「けどわざわざあんな大勢の前で仰るから、本当なんじゃないかって……」 「教授は変わり者だから、その言動には振り回されないように」 はっきりとそう伝えたにも関わらず、尚も彼女の表情から憂いは消えない。 改めて確認しておくが、彼女は可愛らしい見た目と雰囲気によらず(と言ったら失礼だが)勉学に関しては大変優秀な学生だ。 だから彼女は悟り、疑っているのだ。 教授が敢えて「大切な人」と表現した、その意味を。 「……なら、好きな人が、いらっしゃるんですか……?」 そう、くるよな。 弱々しくしぼんでいく語尾と、俺の言葉を恐れるように待つその姿。 「いたら、優愛はどうする?」 あぁ、俺は本当に最低だ。 俺の言葉に翻弄され、苦しんでいる彼女を見て 今確かに、幸せを感じているのだから。
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