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「春樹さんは本当に優しいですね……」
無垢で、汚れを知らないその言葉。
彼女のたった一言で、俺の行為は簡単に美化されてしまう。
けれどそれでは余りにも都合が良く、彼女を騙しているような気さえするので、一応訂正をしておく。
「優愛が思ってるほど、俺は優しい人間じゃない。現に今、優愛をいじめてたしな」
彼女は確かに、と一瞬目を逸らしたものの
「それでも、事情も何も聞かずにわたしを置いてくれてます」
と、やはり俺の行為を美化してくれる。
彼女をここに置いているのは、100%のエゴイズム。
間違っても親切心なんかじゃない。
けれどさすがにそれを伝える事も出来ず、「んー」と笑ってはぐらかす。
彼女の白さの前では、どんなに深い黒でさえ、不思議と緩和されてしまうのだろう。
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