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「春樹さん。聞いて欲しいことが、あります」
ふいに、彼女を取り巻く空気が変わった。
直ぐにその意図を察した俺は、だらしなく緩んでいた頬を引き締めて、彼女に向き直る。
「何でも聞くよ」
声に乗せたのは、今度こそ彼女を安心させたい一心の、優しさだった。
彼女が少しでもリラックスして話せるようにと、俺なりの心遣いのつもりだった。
そして意を決した彼女が、俺に語ってくれた事。
それは自分の生い立ちと、生まれ育った環境、境遇。
両親が居ない事。
小さい頃から祖母と、母親の妹である叔母の家族と暮らしてきた事。
そして最愛の祖母が、亡くなった事。
――出会った時から、彼女の不幸は悟っていた。
元々、彼女の生い立ちについては何パターンかの仮説を立てていたので、語られた内容は直ぐに受け入れる事が出来た。
ただ一つだけ、心底驚いた事がある。
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