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「はい」
「へっ!?」
彼女は今まで俺を見つめていたにも関わらず、いざ声を掛けると驚いたように小さく身体を跳ね上げた。
慌てる反応でさえ、純真が過ぎる。
「そんな警戒しなくていいから」
精一杯の柔らかな笑みと共に、マグカップを差し出した。
少なくとも、今ここで彼女を取って食おうだなんて考えは毛頭無い。
俺はもう少し、彼女の事が知りたかった。
彼女はココアを一口すすると、表情を緩めた。
そんな小さな変化にさえ、心が不思議と温まる。
けれど目が合う度に肩を強張らせる彼女は、やはり俺を警戒しているのだろう。
もしくは単純に、男に対して免疫が無いのか。
「大丈夫。いきなり襲ったりしないから」
そう言った後の慌て様に、仮説は確信へと変わった。
彼女は恐らく、男という生き物を知らない。
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