【6】君を縛り付ける為の約束を

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彼女は因果な生まれにありながら、誰一人として恨んでいない。 自分を産んで預けたきり、一度も会いに来ないという両親の事も。 とばっちりの嫌がらせを向けてくる、叔母の事も。 俺自身が黒い人間であるから、それが所謂、自分を良く見せようと取り繕われた上っ面の綺麗さであれば、直ぐに見抜けてしまう。 けれど彼女に関しては、惚れているというアドバンテージを除いても、絶対に変わる事のない真白の結論だ。 どうやったら、こんなにも美しく清い人間になれるのか。 その答えをぜひ、俺は彼女の祖母に問いたかった。 彼女の人格を育てたのは、間違いなく彼女の祖母であるから。 ……けれどそれは、叶わぬ願い。 皮肉にも、俺と彼女が出会うきっかけとなったのは、彼女の祖母の死である。
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