【6】君を縛り付ける為の約束を

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「こちらこそ……聞いてくださってありがとうございます」 彼女は瞳を潤ませ、声を震わす。 安堵と思われるその表情の理由は、何か。 俺に「家に帰れ」と言われなかったからだろうか。 それとも俺に「可哀想な子だ」と、同情されなかったからだろうか。 恐らく、彼女は同情される事を望んでいない。 なぜなら、彼女はそもそも自分の境遇を恨んではいないからだ。 ……同情、か。 「優愛」 情けなど、俺が持つ訳無いだろう。 「一度家に戻って、叔母さんときちんと話したほうがいい」 俺は寧ろ、彼女の『帰る家がない』という不幸な境遇に 感謝すらしているのだから。
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