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彼女は「藍崎優愛」というらしい。
ゆあ、という優しい響きが彼女にぴったりだ。
次第に緊張が解けていったのか、彼女の表情に少しずつ色が灯っていく。
それを感じ取って、俺自身も妙な満足感に包まれていた。
しかし、和んでばかりもいられない。
少なくとも、彼女に何があったのかを聞かなければ、次の行動が取れない。
彼女の年齢によっては、こうしていることは犯罪にもなり兼ねないのだ。
彼女にとって、辛い何かが起きたことは確かだ。
問い詰める様にならないよう、精一杯の優しさに包んで問い掛けた、つもりだった。
しかし想像よりも彼女の負った傷は深く、俺の問うたその一言で、彼女の顔から一気に血の気が引くのを感じた。
マグカップを持つその手が、微かに震えている。
その姿を見て、俺は一つの決断をした。
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