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「初めまして。遠山と申します」
俺は叔母さんを真直に見つめ、決して視線を逸らさない。
人が視線を逸らす時。
それは逃げたい時、そして、迷いがある時だけだ。
「優愛さんとは面識はありませんでした。先月偶然出会った時、彼女は雨に打たれて衰弱した様子でしたので、保護させて頂きました。
改めて事情を聞くとこちらに家があるということでしたので、本日、伺わせて頂いた次第です。
ご挨拶が遅くなってしまい、申し訳ありません」
そう言って、頭を下げた。
邪(よこしま)な感情はあれど、この発言に嘘はない。
彼女の身を預かる者として、本来ならばもっと早く身辺について知っておくべきだった事も事実だ。
「そう。それで? あんたこれからどうするの? この人に世話してもらうの?」
大きな溜め息の後に吐き出されたのは、彼女に向けた冷淡な言葉。
彼女はぐっと怯み、表情には焦りが滲む。
何かを言おうと必死に言葉を探し、苦痛に歪んだその表情を見て
理性の箍が、静かに外れた。
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