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「優愛さんが大学を卒業するまで、私が責任を持って保護させて頂きます。
彼女は未成年ですので、本日はその許可を頂きに参りました」
そう言って頭を下げた時、自分が今、冷静でない事に気付く。
これは左脳を駆使して発言する、普段の俺では無い。
今の俺を動かしているのは、彼女を守ろうと想う、言わば本能だ。
……結果として、言いたい事は言えたのだから、良いのだけれど。
折角長い年月を経て手に入れた冷静さを、ここぞという場面で発揮出来ないのでは、全く以て意味が無い。
俺にはまだ、大人としての経験値が足りないようだ。
そんな自分を理解した所で、顔を上げる。
誠意を示すため、やはり視線は逸らさない。
「……別に、許可も何も無いわよ。勝手にすれば」
そう短く吐き捨てられた言葉に、俺は情けなくも安堵を覚えて
「ありがとうございます」
そう、再び頭を下げた。
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