【7】全ての悪から、君を守ると決めた

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やがて彼女の荷物をまとめ、車に積み込み、家を後にした。 帰り際、先程の少年がやって来て、母の行いを彼女に詫びた。 少年の年齢を考えると、実に立派な行為だと思う。 この少年は将来、いい男に成長するに違いない。 昼前には家を出たのだが、気付けばすっかり夕暮れ時になっていた。 橙と群青が織り成す淡い光。 彼女は窓の外を眺めて、思いふける。 静かなジャズミュージックだけが、二人の間を静かに巡っていた。 「春樹さん」 不意に、彼女に話し掛けられた。 「家に帰ったら、携帯を充電させて頂いてもいいですか?」 そう言われて、思わず笑ってしまった。 彼女はどこまでも礼儀正しく、律儀だ。
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