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彼女はもちろん、遠慮した。
けれど、拒否ではなかった。
俺はそれを良い事に、彼女を言いくるめようと、言葉を紡ぐ。
本能だった。
冷静になっているつもりで、先行するのは俺のエゴだった。
俺のモノになればいい、と。
虚しさを埋めてくれるのは、彼女なのかもしれないと。
そう、感じていた。
けれど戸惑う彼女の様子を眺めて、ふと、冷静さを取り戻す。
……危なかった。
俺はまた、一人で突っ走るところだった。
彼女が一時の迷いで家出をした、又は全くの違う理由であそこにいたのだとしたら。
俺の提案は彼女にとって、お節介以外の何モノでもない。
それに彼女を待つ人がいるならば、そこに帰してやることが、大人の取るべき正しい行動のはずだ。
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