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そして、大学に入学してから大学院を経て今に至るまでを語り、一呼吸を置いた。
今語った事を頭の中でリピートさせ、冷静に頭を巡らせ、彼女に問う。
「俺は優愛の考えているような、優しい人間じゃなかっただろ」
すると彼女は小さく首を振る。
その姿を見て、驚いた事は確かなんだなと、分かっていても自嘲が漏れる。
「俺が昔遊び人だったこととか、引いた?」
今度は大きく首を振る。
そして彼女は戸惑いながらも、徐ろに口を開いた。
「その過去が今の春樹さんを創っているなら、それは必要な過去だったんです」
……彼女の言葉は、魔法のようだった。
つい先程まで抹消したいと思っていた記憶が、彼女のたった一言で、価値のある記憶へとすり替わってしまったのだから。
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