【7】全ての悪から、君を守ると決めた

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「……そうだな」 確かに彼女の言う通り、あの時の俺が過ちを犯していなければ、俺は自制心など一生知らずに生きていたのかもしれない。 愛しい彼女の真白を守るどころか、進んで黒に染め上げてしまっていたのかもしれない。 物は、考えようだな。 俺の中では悪でしかない記憶も、彼女は感性という名のフィルターで濾過(ろか)し、善の物質を容易く見つけ出してしまう。 ……彼女の真白も、大したものだ。 「……春樹さんを変えてくれた人が、春樹さんの好きな人なんですか?」 彼女はどこか憂い気に、そう問うてきた。 「まさか。もう何年も前の話だよ」 俺の中では、とっくのとうに想いの時効は成立している。 あの人に対する愛情なんて、もちろん今は欠片も存在しない。 「確かに当時は、本気で好きだったけどな」
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