【7】全ての悪から、君を守ると決めた

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それは何て事の無い呟きだった。 彼女が価値を見出してくれた記憶を、単純に懐かしむ言葉だった。 けれど彼女は「そうなんですね」と小さく呟くと、苦渋の表情と共に俯いてしまった。 ……彼女は感情を表に出し過ぎる。 これが計算されたモノならまだしも、悪意がない態度であるから余計に困る。 もう、こんな反応。 「過去の女の存在を知って、ショックを受けました」 そう、言っているようなものじゃないか。 「優愛は? 彼氏、いないの?」 「わ、わたしですか? いるわけないです!」 「ふーん?」 答えなんて分かりきっているのだけれど、大人げなくも悦びを隠せない俺は、彼女をからかって高鳴る胸を誤魔化す。 まさに、いじめっ子の典型的なパターンだ。 照れ隠しの為に好きな子をつい苛めてしまう、それとなんら変わりない。
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