6454人が本棚に入れています
本棚に追加
……物音一つ無い車内の所為か、心臓の音がやけに響く。
彼女との沈黙は、心地良いものであったはずなのに
今は何故か、静寂が痛く苦しい。
「とりあえず、家に帰ろうか」
苦しさから逃れようとする本能か、俺は彼女の返事も待たず、そそくさとシートベルトを外した。
「はい」
そして俺に倣うように、彼女もシートベルトを外す。
普段ならば寧ろ何時間でも見つめていたいと思うはずなのに
いざ、沈黙の中で見つめ合うと……。
情けない。
が、これが恋というものなのだろう。
平常心でいられない事こそが、平常。
男も女も関係なく、恋とは常を忘れさせる、ある意味でのドラッグだ。
最初のコメントを投稿しよう!