【7】全ての悪から、君を守ると決めた

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……物音一つ無い車内の所為か、心臓の音がやけに響く。 彼女との沈黙は、心地良いものであったはずなのに 今は何故か、静寂が痛く苦しい。 「とりあえず、家に帰ろうか」 苦しさから逃れようとする本能か、俺は彼女の返事も待たず、そそくさとシートベルトを外した。 「はい」 そして俺に倣うように、彼女もシートベルトを外す。 普段ならば寧ろ何時間でも見つめていたいと思うはずなのに いざ、沈黙の中で見つめ合うと……。 情けない。 が、これが恋というものなのだろう。 平常心でいられない事こそが、平常。 男も女も関係なく、恋とは常を忘れさせる、ある意味でのドラッグだ。
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