【7】全ての悪から、君を守ると決めた

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言葉が、出なかった。 ただひたすらに、最後の一文を見つめた。 彼女の名前は、祖母が付けたものだとばかり思っていた。 けれど、違った。 我が子が愛される事を願って、付けられた名だった。 優しく、愛してください。 その想いは、彼女の祖母へと託された。 彼女の両親は、自らの置かれた環境、金銭的余裕、社会的立場など、それら全てを含めて、我が子を育てることは無理だと判断したのだ。 しかし結局のところ、それは単なる傲慢に過ぎない。 育てられないと分かっているのであれば、そもそも子を宿さなければ良いという話なのだから。 自分たちの愛を証明する為に、子を宿す。 無責任で、自分勝手で、救いようのないエゴイズム。 けれど俺は、そんな人達の考えが嫌という程理解出来てしまう。 何故なら、俺も同等のエゴイストであって もしも彼女の両親と同じ立場だったならば 間違いなく、同じ事をするからだ。
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