【8】今夜はどうにも、眠れそうにない

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ふと、クセモノ達の隙間から、こちらにズンズンと向かってくる1人の女子の姿が見えた。 よく見るとその手にはか細い腕が握られていて、引きずられるようにこちらにやってくるのは……愛しのウサギ。 「おはよーございます。お話し中すみません。宮守先生の助手の方ですよね? お名前何でしたっけ」 肩につく程の丸いボブが、ふわりと揺れた。 この子が、昨日彼女が嬉しそうに話していた「仲良しのコトちゃん」か。 「おはよう。助教の遠山春樹です」 彼女の友人ならば丁重に扱わなければならないし、間違っても敵に回したくはないと、笑顔を作った。 「遠山先生ね! あたしたち宮守先生のクラスなんです」 彼女も笑顔を返してきたが、どこか疑心を含んでいる辺り、俺の笑顔が全力の愛想笑いである事に気付いているのだろう。 確かこの子は……君島琴音、と言ったか。 恐らく、勘の良い子なのだろう。
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