【8】今夜はどうにも、眠れそうにない

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「分かるよ。君島さんと、藍崎さん」 俺がそう言って再び笑顔を向けると、ウサギの彼女ははっとしたように頬を染めて、君島さんの背中にすっかり隠れてしまった。 家の外で会う事に緊張しているのだろう。 そんな反応も、初心(うぶ)で可愛らしい。 「すごーい! もう名前覚えてるんですか?」 「まぁ、ね」 もちろん、クラス全員の名前など覚えているはずもないけれど、ここは適当に流すしか無い。 そんな俺を見て、ふーんと意味深に2度頷いた君島さんは、やはり意味深にニヤリと笑った。 「遠山先生、下の名前春樹っていうんだぁ! じゃあ春樹先生って呼んでもいいですかぁ?」 クセモノその1が、輪の中からひょっこりと顔を出した。 自分の容姿に自信があるのだろう、偽物の睫毛をパチパチと上下させ、不自然に大きな黒目で俺を下から見上げている。
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