【8】今夜はどうにも、眠れそうにない

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「あれー? コトと優愛ちゃんじゃね?」 良く通るクリアな声は、輪の後方から突如現れた。 「凛太! それに十夜も! おはよー!」 君島さんが駆け寄った先に視線を送る。 すると、草むらから獲物の動向を窺うかの如く、こちらを静かに見据える瞳と搗(か)ち合った。 「十夜?」 君島さんの呼び掛けに応えず、十夜はゆっくりとこちらに歩み寄ってきた。 輪を作っていた女子は自然と横に流れ、十夜と俺の直線の間に、彼女が挟まれる状況となる。 十夜は決して視線を俺から逸らさず、表情も変えない。 ……嫌な、感じだ。 ギャラリーがいるこの状況では、彼女をヘタに庇う事も出来ない。 それを知っての事だろうか、十夜は迷わず俺に……いや、彼女に近付いていく。
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