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「行くぞ」
何も言わない俺に退屈したのか、十夜は最後まで敵意を逸らさず、慌てる彼女を引きずるように連れて行った。
その光景に耐え切れず、思わず目を細める。
……俺の、彼女に。
手荒な真似をするな。
ケモノの手から彼女を解放し、俺の腕の中へ避難させたい衝動。
しかしそれが出来ない様々な要因に、苛立ちは更に増していく。
ここで十夜に食って掛かれば、それこそ相手の思う壺で
俺と彼女の間に特別な関係があるという事も、一瞬にして知れ渡る。
……大人とは、なんて不自由な生き物なのか。
この時ばかりは、考えなしのガキに戻りたいと懇願した。
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