【8】今夜はどうにも、眠れそうにない

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「ね、なに読んでるの?」 隣に座っていた女子は立ち上がると、俺の椅子の肘掛けに手を付き、手元を覗き込むように身体を寄せた。 すかさず俺は本を閉じ、膝の上に置く。 「秘密」 「えー! まさかエッチな本?」 「さぁな」 「もー、せんせーって本当に何も喋ってくれないよね!」 掘り下げられるのは面倒だからな。 「じゃあさ、彼女がいるって噂はホント?」 「そういうことにしといて」 「えー! ちょー曖昧なんですけど!」 「いてもいなくても、君たちには関係ないだろ」 「えー! つめたぁい」 俺が優しさを提供するのは、VIPの一名様のみ。 その他の人間、特に異性に関しては、誰に対してもドライだ。 今風に言うならば、塩対応。 少しでも優しさを見せたら、したたかな女はここぞとばかりに付け込んでくる。
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