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「なぁ遠山、おめー今いくつだ?」
「今年で27になります」
「おーおー、まだまだわっけぇなぁ!」
熊井先生は手近にあった瓶ビールに手を伸ばし、空のグラスに金の液体を注いだ。
「ま、一杯だけ付き合えよ」
「……では、一杯だけ」
俺は差し出されたグラスを受け取ると、ほぼ空になっていた熊井先生のグラスに、同じく金の液体を注ぐ。
そして乾杯!という熊井先生の号令と共に、グラスはキン、と音を立てて合わさった。
正直、アルコールは特別好きではないのだが。
賑やかな席の雰囲気に呑まれているのだろうか、酌み交わした相手が熊井先生だからだろうか、喉を通る久々の金色に不思議と旨さを感じた。
「遠山、彼女いるんだってな?」
「……まぁ、一応」
熊井先生は学生たちに恐れられているものの、情に厚く真っ直ぐな性格ゆえ、慕っている学生もまた多い。
そのネットワークの広さは教員の中では随一と言っても過言ではなく、俺に彼女がいるという情報も、どこかの学生から仕入れてきたのだろう。
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