6454人が本棚に入れています
本棚に追加
「今の遠山が昔の俺にそっくりだから、だっ!」
「……は?」
うっかり、失礼な返答をしてしまった。
「はっはっはっ! いやな、俺昔は荒れててよぉ。当時から付き合ってた今の嫁さんにも、めちゃくちゃ迷惑かけてなぁ……」
熊井先生は空のグラスに再びビールを注ぎ込む。
盛り上がった白い泡は瞬く間に喉元へと流し込まれ、ゴクリと音を立てて落ちていった。
「当時の俺は真っ当に生きることを諦めて、この世を冷めた目で見ててな。遠山はその時の俺と同じ目をしてんだよ」
――諦め。
その言葉は、痛く、深く。
急所を突かれたように、胸に響いた。
「なぁ遠山。お前は何をやらかしたんだ?」
……宮守教授も、熊井先生も。
どうして諸先輩方は、俺の黒い部分を容易く見抜いてしまうのか。
俺もまだまだ、修行が足りないらしい。
最初のコメントを投稿しよう!