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冷静に思い返せば、現状はとんでもないことになっている。
見知らぬ異性を、家に招き入れた自分。
同時に、警戒心も無く、ここに留まった彼女。
その顔色は大分良くなったものの、疲労の溜まっているであろう身体を休めて欲しくて、空き部屋へと案内した。
ベッドと共に布団もシーツも用意してくれていた親父に、心の中で小さく感謝をした。
今頃、彼女はベッドの中で丸くなっているのだろう。
彼女の事を深く詮索するつもりはない。
もちろん彼女の口から何か語られることがあれば、聞いてみたいとは思う。
とりあえず、年齢だけは早いうちに確認しなくてはならない。
俺はソファの上に横になった。
目を瞑り、脳裏に浮かんでくるのは、雨の中に佇む彼女の姿。
あの瞬間から、俺の中の虚しさは息を潜めている。
代わりにやってきたのは、温もりに包まれた穏やかな感情。
何年も俺の中に居座っていたはずの虚無感は、何故、一瞬にして消え去ったのか。
そして何故、俺は彼女を救いたいと思ったのか。
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