【8】今夜はどうにも、眠れそうにない

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「高2の時、保健室の人妻センセーに手を出しました」 「ブッ!!」 熊井先生は今まさに飲み込もうとしていた金の液体を、見事にグラスに吹き出した。 俺はすかさずおしぼりを手渡す。 「おっおま……! ブハッ、まじか!」 「はい。学校側にバレてセンセーはクビに。俺はお咎め無しです」 「はっはっはっ! そりゃやるせねーなぁ! しっかしお前、年上の女が好きなのか?」 「いえ、ただ単に盛ってただけです」 「おーおーマセガキめ! わぁった、あれだろ! そのセンセ、巨乳だったんだろ!」 「巨乳でした」 「っかー! 分かるぜ! 若い頃はデカけりゃデカいほどいいんだよな! で、今はどうなんだ?」 「迷うこと無く貧乳派です」 「はっはっは! 遠山、お前おもしれーなぁ! 普段からそんくらいラフに生きろよ! あーおもしれー」 たった一杯のビールで饒舌になってしまった自分にも驚きだったが 俺の中の背徳をゲラゲラと笑い飛ばしてくれる人がいる事にも、また驚きだった。 俺の過去なんて大した罪でも何でもないのかもしれないと、錯覚さえしてしまう程に 熊井先生はその後も、俺の過ち全てを清々しく飲み下してくれた。
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