【8】今夜はどうにも、眠れそうにない

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俺が保健部屋に戻る頃、風呂の時間を終えた学生たちは、旅館に賑やかな声を響かせる。 土産屋を見る者、戯れる者、卓球を楽しむ者。 学生たちは皆、限られた自由時間を謳歌しているようだった。 「……返事はないか」 宴会中、彼女にこっそりと送ったメール。 朝以降彼女との接触はなく、色々と気掛かりも多かったので、それとなく送ってみたのだ。 ……というのは、本音兼、建前。 本音は、俺がこの保健部屋で一人暇を持て余している、という事を伝えたかっただけだ。 伝えた所で、心配症な彼女がここへやってくる可能性は、ゼロに等しい。 けれどもしかしたらと、どこかで期待していた。 きっと彼女は、浴衣を着ているだろうから。 ぜひ拝みたい。 さぞかし可愛いに決まっている。 「……あー」 自由時間を謳歌したいのは、俺も同じだ。
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