【8】今夜はどうにも、眠れそうにない

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プツンと、脳が音を立てる。 感情の糸が切れる時、人は理性を手放す。 「……アイツ」 出来る事ならば、彼女にこの感情を晒したくはなかった。 彼女の前では、優しいだけの人間でいたかった。 「春樹さん……?」 彼女の戸惑う声が聞こえた気がした。 けれどもう、手遅れだ。 込み上がる怒りに耐え切れず、彼女の身体を引き剥がす。 そして頬を包み込み、無理やり顔を上げさせた。 「口に、されたのか」 確認せずとも、分かっている。 それでも事実を認めたくないが故、彼女の口から否定の言葉が出てくる事に、最後の望みを掛けていた。
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