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プツンと、脳が音を立てる。
感情の糸が切れる時、人は理性を手放す。
「……アイツ」
出来る事ならば、彼女にこの感情を晒したくはなかった。
彼女の前では、優しいだけの人間でいたかった。
「春樹さん……?」
彼女の戸惑う声が聞こえた気がした。
けれどもう、手遅れだ。
込み上がる怒りに耐え切れず、彼女の身体を引き剥がす。
そして頬を包み込み、無理やり顔を上げさせた。
「口に、されたのか」
確認せずとも、分かっている。
それでも事実を認めたくないが故、彼女の口から否定の言葉が出てくる事に、最後の望みを掛けていた。
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