【8】今夜はどうにも、眠れそうにない

30/48
前へ
/678ページ
次へ
「え、あ……はい……」 結果はやはり、肯定だった。 彼女は俺の怒りに困惑している様子だ。 けれど今は笑顔を取り繕える余裕など、ない。 「……あー」 怒りを一度吐き出して、大きく息を吸った。 強制的に脳に酸素を送るが、気休めにもならない。 彼女の腰に腕を伸ばすついでに、ドアノブの鍵を捻る。 そしてもう片方の腕で彼女の足元を掬(すく)い、ひょいと持ち上げた。 「はっ、春樹さん!?」 彼女は突然抱きかかえられた事に大慌てだが、そんな事、知ったこっちゃない。 邪魔者が入る心配のなくなった部屋の奥へ、彼女を連行する。 そして広縁の籐椅子に慎重に降ろすと、頬を再び包み込み、上から覆い被さる勢いで顔を寄せた。
/678ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6454人が本棚に入れています
本棚に追加