【8】今夜はどうにも、眠れそうにない

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この麗しい唇の『ハジメテ』を奪った奴は 間違いなく……十夜だ。 俺が必死に自制と闘い、ギリギリの中で守ってきた彼女の真白を アイツはいとも簡単に奪い去った。 ……ふざけるな。 俺の努力も知らずに 俺の許可も得ずに 彼女に勝手な事をしやがって。 今直ぐにでもアイツの元へ行って、ぶん殴ってやろうか。 「っ……」 彼女の頬が熱を帯びる。 俺がほんの少しでも動けば、容易く唇を重ねる事の出来る距離。 俺はここでも必死に、自制と闘っていた。 ここで無理やり彼女の唇を奪い、記憶を強制的に上書きする事も可能だ。 けれどそれでは、十夜がした事となんら変わりない。 欲情を抑えられない、ケモノの分際に成り下がるだけだ。
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