【8】今夜はどうにも、眠れそうにない

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彼女は残された痕跡を見て、恥ずかしさからか、その赤に負けない位に頬を染め、瞳を潤ませた。 その反応もやはり俺には幸福でしか無くて、抑えきれない悦びで顔はだらしなく緩む。 「優愛の泣き顔、見れたな」 彼女の目尻に溜まった大粒の涙を、そっと指で拭う。 「……泣き顔、見たらやです、って、言ったのに……」 「優愛が泣きながら俺のところに飛び込んできたんだろ」 「そ、そうですけど……」 彼女自身も、自らの取った行為に相当動揺しているらしい。 「けど、俺も男だから。あんまり無防備に触れるなよ。じゃないと、優愛をもっと泣かすことになる」 そう、今回はギリギリ自制を保てたから良かったものの。 またあんな風に抱き付かれたら、今度こそ襲わない保証など何処にもない。
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