【8】今夜はどうにも、眠れそうにない

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「……春樹さんは、嫌じゃ、なかったです」 辿々しく紡がれた言葉に、ドキリとした。 俺を見下ろすその表情には、微かな迷いが浮かぶ。 ……つまり。 十夜は、嫌だったけれど 俺は、嫌じゃない。 そう、捉えていいのだろうか。 「優愛……」 君は天性の才能を持つ小悪魔だ。 こんなの、嬉しくないはずがない。 もしもこの台詞で落ちない男がいるならば、俺は全力でそいつの事を崇めよう。 ――尤も、俺は最初から落ちてしまっているので、更に深みにハマるだけなのだけれど。 俺はもう何度目か分からない、彼女を抱き締めたい衝動を必死に抑えつつ、徐に立ち上がり彼女の頭をそっと撫でた。
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