【8】今夜はどうにも、眠れそうにない

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十夜は俺の剥き出しの苛立ちに、少なからず驚いている様子だった。 しかし直ぐに口角を上げると、実に愉しそうに笑う。 「へぇ? アイツはてめーのもんなのか。処女かと思ったんだけどな」 「……黙れ」 「てめーが手出さねぇワケねーもんなぁ? それとも、敢えて手ぇ出さねーくらい大事にしてんのか?」 「あぁ、それがどうした」 俺の答えに十夜はまじかよ、と言って笑う。 「なら尚更奪ってやりてーな。アイツの処女」 十夜は俺を一番怒らせる台詞を、ピンポイントで突いてくる。 彼女という名の弱みを、これでもかと利用してくる。 血気盛んな中高時代の俺だったら、迷わずぶん殴っていただろう。 「可愛くねぇ弟だな」 「てめーの弟になってやった覚えはねーよ」 ……本当に、可愛くねぇ。
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