【8】今夜はどうにも、眠れそうにない

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「私怨(しえん)に彼女を巻き込むな。報復の方法なんて他にいくらでもあるだろ?」 「ンなだせーこと今更しねーよ。俺はただてめーが嫌いなだけだ」 「俺のことは幾らでも嫌ってもらって構わない。だけど関係のない彼女にまで危害を加えることは許さない」 「つっても彼女ってワケでもねーんだろ? ならてめーの許しを請う必要なんかねーよな?」 十夜は敵意を逸らさず、一向に引く気配もない。 彼女が俺の弱みである事は確かだ。 そこに付け込む理由も明白。 けれどどこか、十夜は彼女という存在自体に執着をしているように思えてならない。 ――嫌な予感がする。 「十夜は彼女のことが好きなのか?」 単刀直入に問うた。 すると十夜は口角の片端を徐ろに上げ、不敵な弧を描く。 「好きじゃねーよ。でも、嫌いでもねーな」
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