【8】今夜はどうにも、眠れそうにない

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……いや。 寧ろ受け入れられないのであれば、いっその事、全てを曝け出してしまおうか。 それで彼女に嫌われたとしても、訪れるべき結末が早い段階でやってきただけであって 時期が早い分、俺も彼女も痛みは少なく済むのではないだろうか。 彼(か)の偉人、アインシュタインはこんな言葉を残している。 『我々が進もうとしている道が正しいかどうかを、神は前もって教えてはくれない』 つまり、幾ら待った所で、意地悪なカミサマは俺に正しい道など説いてはくれないという事だ。 思い返せば昨日の晩、熊井先生にも同じような事を諭された。 人間は死ぬまで未熟なのだから、成長するのを待っていてもダメだ、と。 熊井先生は偉人だな。 人生論においては、アインシュタインと等しい。 ――ダメ元で、偉大なる諸先輩方の言葉に賭けてみるのもアリなのかもな。 俺は半ば諦めの嘲笑を落とすと、前を見据えて歩き出した。
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