【9】黒から白は、生まれない

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「正木にでもくれてやろうか」 あいつならきっと、大喜びで受け取ってくれるだろう。 と言っても、おちゃらけた正木にもどうやら想い人がいるようなので ネタとして一応受け取ったとしても、恐らく本当に連絡などしないのだろう。 俺は研究室の中へ入ると、迷わずある機械の前に向かった。 電源スイッチを押し、差込口へと紙切れを流す。 「ゴメンネ」 謝罪は一応、礼儀として。 機械は低い音を立てて、一思いに紙切れを飲み込み、ミーハー女子の想いは儚く塵と化した。 一見残酷な行いだが、記されたモノは完全なる個人情報。 寧ろこれは俺なりの親切心だと捉えて欲しい。
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