【9】黒から白は、生まれない

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「おはよー遠山君っ!」 「おはようございます、教授」 教授は今日もにこやかな笑顔で研究室に現れた。 暑くなってきたからと一昨日切ったらしいその髪は、今日も軽やかに乱れている。 「おや、遠山君は今日もゴキゲンだねぇ」 「……そんなに顔に出てますか?」 「僕たちの関係ももう長いからね。君が必死に隠そうとしている感情くらい、簡単に見抜けるさ!」 確かにトータルで考えれば、実の父親よりも教授の方が確実に長い時を共にしている。 「球技大会が終わって女子に群がられて、さぞかし不機嫌だろうと思っていたけど。そうでもないみたいだから安心したよ」 「いや、今日も朝から迷惑なお誘いが1つあって、一瞬不機嫌になり掛けました」 「あははっ! 相変わらず冷たいねぇ。けど」 と、教授の眼の色が変わった。
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